山の神と海賊

今年の箱根駅伝の山登り5区での東洋大柏原竜二選手の走りは圧巻でした。正に「山の神」の名に恥じない圧巻の走りでした。彼の走りが東洋大に2連覇をもたらしたという事に異論を挟む人はいないでしょう。
勿論ダニエルという大砲を擁しながらシード落ちした日大の例でも分かるように決して一人の力だけでは勝てないし、事実東洋大は復路でもそれぞれが安定した走りを見せていました。ただ、それでも柏原選手の走り無くして、2連覇は無かったと思います。
彼を見ていると一人のロードレーサーを思い出します。98年にジロとツールのダブルツールを達成した「海賊」こと故マルコ・パンターニ(イタリア)です。ツールで勝つ鉄則は山で離されず、個人タイムトライアルでリードを稼ぐ、です。つまり山は勝負の重要な要素ではあるけれども、決定打ではないということです。
過去7度も山岳王を獲得しているリシャール・ビランク(フランス)が結局1度もツールを取れなかったことからも、その事が窺い知れます。
その鉄則を打ち破ったのが98年のパンターニの快走です。小さな体でグイグイと後続を引き離す圧巻のヒルクライミングは、一見スピードもなくエキサイティングとは無縁に思える山登りを、スペクタクルなショーに変えてしまいました。
競技は違えど柏原選手も長距離というともすると地味なスポーツでスペクタクルを生み出せる稀有な存在だと思います。来年以降も彼の走りに興奮したいと思います。

しかし、世の中にはモンスターの登場を快く思わない人もいるようです。。
「柏原快走で5区再短縮も/箱根駅伝
http://www.nikkansports.com/sports/hakone-ekiden/2010/news/p-sp-tp0-20100104-582370.html

一人の選手の力が飛びぬけているからルールを変える。
まったくもってバカげています。こういうバカなお偉方が多いから、日本はあらゆるスポーツで個性を持った選手が中々生まれてこないんだと思います。
柏原選手を倒す選手を育てればいいじゃないか!!という気概を持った指導者はいないんでしょうか?

とはいえ、箱根駅伝に関して言えば、柏原選手は抜きにしても、山登りの比重が高い現在のコース割は議論の的ではあるようです。そこのところは一個人の力を抜きにして慎重に議論して欲しいところです。

鈴木大地のバサロ泳法やノルディック複合のジャンプ点の改正などなど、それでなくても日本は欧州の(基本米国はあまりそういうことはしない)標的とされてきた訳ですから、国内で同じ愚行を繰り返す事もないでしょう・・・